【相続土地国庫帰属】承認申請手続きの流れや負担金・不服申立てなどについて解説します
相続した土地が「遠くにある」「管理が大変」「売却できない」など、様々な理由でお困りの方が多く、所有者不明土地が増加し社会問題になっています。それに伴い、そんな土地を国に無償で譲渡できる「相続土地国庫帰属制度」が、令和5年(2023年)4月27日からスタートしました。
そこでこの記事では、相続土地国庫帰属制度の手続きの流れを分かりやすく解説します。却下・不承認の要件や負担金、不服申立てについても説明しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 承認申請:手続きの流れ
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に無償で譲渡するための制度です。この手続きは、土地の所在地を管轄する法務局への事前相談から始まり、一連の審査フローも明確になっていますので、まずは基本的な流れを把握すれば全体像が理解しやすくなります。
1)土地所在地を管轄する法務局に事前相談
まずは、相続土地がある地域を管轄する法務局に連絡を取り、相続土地国庫帰属制度についての事前相談を行います。この段階で、手続きの流れや必要な書類、注意すべき点などを確認できます。土地が遠方にある場合には、事前相談は、最寄りの法務局で可能なケースもありますので相談してみましょう。
2)申請書類等の取得・作成
事前相談後、申請に必要な書類を取得し、申請書類などを作成します。土地に関する図面や、境界点を明らかにする写真などが必要になるので、自分だけで準備が難しいケースでは、土地家屋調査士などの専門家への相談を検討しましょう。却下や不承認の要件を事前に把握して、十分に対策したうえで書類を準備することが重要です。
参考:法務省「相続土地国庫帰属制度における専門家の活用等について」
3)承認申請
書類がそろったら、次は承認申請を行います。この申請が受理されると、手続きが正式にスタートします。審査手数料として、土地一筆あたり「14,000円」が必要で、申請書に相当額の収入印紙を貼って納付します。手数料は、「申請取り下げ・却下・不承認」の場合にも返却されませんのでご留意ください。
4)書面&実施調査
申請が受理された後、法務局は提出された書類の審査を行い、その後に土地の実地調査を実施します。調査への協力が必要なケースもありますので、対応できるようにしておきましょう。
5)承認
書面審査と実地調査を経て、すべての条件を満たしていれば承認されます。
6)負担金の納付
承認を受けた後、負担金を納付します。負担金の詳細は、後述しますのでご確認ください。
7)国庫帰属
負担金の納付を終えると、土地は正式に国庫に帰属することになります。
2. 申請が却下される場合
却下要件の基本的な基準は、明示されていますのでしっかりと把握しておきましょう。
1)権限を有しない者の申請
相続土地の国庫帰属を申請するには、相続人または共有者であることが必須です。対象者以外の者が申請した場合、その申請は却下されます。
2)申請ができない土地に該当
国庫帰属の申請が可能な土地は、特定の条件を満たしている必要があります。また、承認申請できない土地も明示されていますので、事前に確認しておきましょう。
くわしくは、弊所ブログ「相続土地国庫帰属制度とは?対象者や申請できない土地について解説します」をご覧ください。
3)正当な理由なく調査に応じない
申請後、法務局による書面審査や実地調査が行われます。申請者が正当な理由なくこれらの調査に応じない場合、申請は却下されます。調査は、土地の状態や相続人の資格を確認するために不可欠であり、協力が求められます。
これらの却下理由を避けるためには、申請前に十分な準備と確認が必要です。相続土地国庫帰属制度の利用を考えている方は、これらのポイントを注意深くチェックし、必要な書類や情報を事前に整えておくことをおすすめします。
3. 申請が不承認になる場合
相続土地国庫帰属制度の申請が不承認になるのは、主に「管理が難しく費用がかかる」と判断される場合になります。土地ごとに個別に判断して決定されますが、ここでは申請が不承認となる主な理由を、具体的な例をあげて解説します。
1)崖などがあり管理に多くの費用と労力がかかる土地
例えば、勾配30度以上で高さ5メートル以上の崖がある土地は、管理に多額の費用と労力が必要です。これらの土地は、安全対策や維持管理が困難であるため、不承認の対象となります。
2)管理等に邪魔な工作物・車両・樹木・その他有体物が地上にある土地
地上に建物や構造物が存在し、それが管理や利用の妨げになる土地も不承認となります。
3)除去しなければ管理できない有体物が地下にある土地
地下にパイプラインや基礎構造物など、除去が必要な有体物がある土地も、同様に不承認の理由となります。これらの除去には専門的な技術と高額な費用がかかるため、国庫帰属の対象外と判断されます。
4)訴訟により阻害要因を排除しなければ管理等できない土地
訴訟を必要とするような問題がある土地、例えば通行権の問題や所有権に関する紛争がある土地は、そのままでは管理が困難であるため不承認となります。
5)その他、管理等に多くの費用・労力がかかる土地
■土砂崩れなど災害防止対策が必要な土地
■鳥獣や病害虫などによる被害が予測される土地
■適切な整備がされていない森林
■適切な管理費用以外の金銭がかかる土地
■その他、特別な金銭債務や労力がかかると予想される土地
4. 負担金とは?
土地所有権の国庫への帰属の承認を受けた者は、承認された土地につき、国有地の種目ごとに「その管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額」の負担金を納付しなければなりません。
1)負担金の考え方
国が管理をすることとなった土地に関して、土地所有者が土地の管理の負担を免れる程度に応じて、国に生ずる管理費用の一部を負担してもらうという考えを前提として負担金を算定します。具体的な計算方法などは「相続国庫帰属法」等によって定められています。
参考:e-Gov「相続国庫帰属法(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)」
2)負担金の目安
承認を受けた土地がどのような種目に該当するか、またどのような区域に属しているかに応じて負担金額が決定されます。
3)負担金の納付方法
負担金の納付は、通常、指定された銀行口座に振り込む形で行われます。納付期限や方法については、承認通知と共に詳細(納入告知書等)が案内されるため、その指示に従って納付します。
5. 却下・不承認処分への不服申立て
相続土地国庫帰属制度における申請が却下または不承認となった場合、申請者はその決定に対して不服申立てを行うことができます。
1)不服申立ての方法
却下・不承認に不服がある場合は、行政不服審査法に基づく審査請求等、あるいは行政事件訴訟法に基づく取消訴訟等を行うことができます。
2)不服申立期間
不服申立ては、却下・不承認の通知を受け取ってから一定期間内に行う必要があります。却下・不承認の決定に疑問を感じた場合は、この手続きを通じて正当な審査を求めることが可能です。
ただし、審査請求や取消訴訟などで不服申立てを行う場合には、法的な知識が必要になりますので専門家への相談を検討しましょう。
【審査請求】
処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内、かつ処分があった日の翌日から1年以内
【取消訴訟】
処分があったことを知った日から6ヶ月、かつ処分の日から1年以内
6.土地のことなら「土地家屋調査士法人 臼井事務所」
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地でお悩みの方にとって、非常に役立つ制度ですが、ルールや手続きはかんたんではありません。
特に、土地の図面や境界などが不明確なケースでは、難易度がいっきに上がってしまいます。これらの土地に関する疑問やお悩みは、神奈川県川崎市の「土地家屋調査士法人 臼井事務所」にご相談ください。
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