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土地関連

買いたい土地の所有者が不明な場合!所有者の調査方法について解説します

土地の購入を検討する際、所有者の不明に直面することがあります。このような状況では、所有者を特定するための調査が必要になります。


そこで本記事では、所有者が不明な土地の調査方法について、具体的な手順と注意点をわかりやすく解説します。不動産取引の円滑な進行のために、正確な情報収集の方法を身につけましょう。


参考:国土交通省「所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン」


1.登記名義人が行方不明のケース

購入を検討している土地の「登記名義人」と連絡がつかない場合


1)所有者の調査

所有者の調査に係る一般的な方法としては、登記名義人の住所を手掛かりに、住民票の調査、近隣住民や関係者等の聞き取りを行う方法が考えられます。


住民票記載の住所が登記簿と異なっていれば、戸籍の附票により現住所を調査することになります。他方で、住民票記載の住所と登記情報とが同一であれば、当該住所には既に居住しておらず転出ないし転籍をしている可能性が高いため、除票を請求することになります。


上記調査によっても、所有者の現住所が判明しない場合には、判明している住所を手掛かりに、近隣住民や親族等の関係者に対して聞き取りを行うことになります。


しかし、事例のケースでは、単に土地の購入を検討している者にすぎず、土地購入のため交渉をする場合には、住民票を取得することが難しいと考えられます。この場合、土地付近の不動産所有者や近隣住民への聞き取り等により所在を調査する方法が考えられます。


2)所在不明の場合の手続

所有者の所在がどうしても確認できない場合、以下の手続きを検討する必要があります。


①失踪宣告の手続き

失踪宣告とは、一定期間音信不通で生死不明の人を法律上死亡とみなす制度です。普通失踪の場合、行方不明から7年間、戦争や災害など特別な事情がある場合は1年経過後に家庭裁判所に申立てができます。失踪宣告が認められると、その時点で死亡したとみなされ、相続手続きが進められるため、土地の売買手続きが可能になります。


ただし、失踪宣告を申し立てるためには利害関係が必要であり、単に土地の購入を検討しているにすぎないケースでは、この要件を満たさないと考えられます。


②不在者財産管理人の選任申立て制度

不在者財産管理人制度は、行方不明の所有者の財産を管理するための制度です。不在者財産管理人を家庭裁判所に申立てすることで、選任された管理人がその不在者に代わって土地の管理や売却を行うことができます。この制度を利用することで、所有者が不明な土地でも円滑に取引を進めることが可能です。


③所有者不明土地管理制度

所有者不明土地管理制度は、土地の所有者が長期間不明であり、土地の管理が適切に行われていない場合に利用される制度です。市町村や都道府県が所有者に代わって土地を管理し、必要に応じて売却できます。これは所有者が不明な土地の取引を進めるための有効な手段です。


事例のような土地の買受希望者、隣地所有者等についても「利害関係人」に該当すると考えられているため、方法として検討できます。



2.登記名義人が死亡しているケース

購入を検討している土地の「登記名義人」が死亡していたため、相続人を調べる場合


1)相続人の特定

登記名義人が死亡している場合、その土地の相続人を特定する必要があります。相続人を特定するためには、被相続人の戸籍謄本等を取り寄せ、法定相続人を明らかにします。


なお、立場にもよりますが、単に土地を購入しようと考えているだけの場合には、原則として戸籍等を収集することができません。


2)一部の相続人の所在が判明しない場合

上記の調査により、相続人が存在することが判明した場合であっても、場合によっては、一部の相続人についてその所在が不明な場合等が生じることもあります。


その場合には、自身が「利害関係人」に該当する場合には、自ら不在者財産管理人選任申立てを行うことや、所在が判明している相続人に対して「利害関係人」として不在者財産管理人選任制度の利用を促すことが考えられます。


その上で、選任された不在者財産管理人に遺産分割協議をしてもらうことが考えられます。


3)相続人の有無が判明しない場合

上記の調査により、戸籍上相続人となるべき者が存在しないことが判明した場合や、相続人のあることが明らかでない場合には、相続財産清算人の選任申立てを行うことが考えられます。相続財産清算人は、当然に相続財産の管理行為を行う権限を有するため、相続財産管理人との関係でいうと、相続財産清算人が相続財産管理人を含みます。


事例では、土地の購入を目的としているため、清算行為を行うことを目的として選任される相続財産清算人の選任により、相続財産清算人と土地の処分について交渉することが考えられます。



3.相続登記がされておらず法定相続人が多数いることが推定されるケース

購入を検討している土地の「登記名義人」が死亡しており、複数の相続人がいる場合


1)法定相続人の調査

相続登記が行われていない不動産の場合、相続人が多数存在している可能性があります。この場合、相続人全員を特定するために、被相続人の戸籍謄本等を調査し、現在のすべての法定相続人を確認します。


なお、立場にもよりますが、単に土地を購入しようと考えているだけの場合には、原則として上記戸籍等を収集することができません。相続関係が複雑な土地の取得は、難易度が高いため、専門家への相談を検討しましょう。


2)法定相続人が判明しない場合の対応

法定相続人が特定できない場合、以下の制度を活用します。


①不在者財産管理制度

法定相続人の有無や、所在が判明しない場合には、判明している一部の法定相続人に対して、不在者財産管理人選任の申立てを行うように協力を求めることが考えられます。


ただし、不在者財産管理人の権限は、保存行為、対象となる目的物または権利の性質を変更しない範囲内においてその利用または改良を目的とする行為に限定されており、ケースのように買い受けを目的とする場合には家庭裁判所の許可を得る必要があることに注意を要します。


②相続財産清算人制度

仮に上記の調査において、法定相続人の生存や所在が判明しない場合には、「相続人のあることが明らかでないとき」として、相続財産清算人選任の申立てを行うことが考えられます。


③所有者不明土地管理命令の申立て

上記の調査を尽くしても、一部の法定相続人の生存または所在が判明しなかった場合には、対象不動産の共有者となるべき一部の不明法定相続人について、当該共有持分を一括して管理する管理人の選任を申し立てる所有者土地管理命令の申立てを行うことが考えられます。


ただし、申立権者は、対象土地について利害関係を有する必要があるところ、不動産の購入交渉のようなケースの場合においても「利害関係人」に該当すると考えられています。



4.解散した法人が所有権登記名義人となっているケース

既に解散している法人が所有者となっている土地購入を検討する場合


1)清算人の確認方法

法人が解散している場合はその法人の清算人を確認する必要があります。清算人が1人であれば、当該清算人との間で交渉をすることになります。


清算人が複数存在し、清算代表者が選任されていない場合には、対象不動産の売却について過半数の議決が必要となりますので、清算代表者選任の有無を確認する必要があります。


2)清算人選任の申立て

清算結了登記が未了であるものの、清算人が判明しない場合または清算人が死亡している場合においては、株主・債権者・監査役等の協力を得て、法人についての清算人選任の申立てを行うことになります。


また、清算結了登記が完了している場合においても、同様に清算人選任の申立てを行うことになります。その上で、選任された清算人との間で、対象不動産について売買契約を締結することになります。



5.所有者とされる法人の代表者が死亡しているケース

購入を検討している土地の「登記名義人」の法人代表者が死亡していた場合


■現役員の調査方法

商業登記記録において通常代表者の住所については、記載されているがその他の取締役等の役員や監査役については、氏名のみが記載されているのみで各人の住所までを確認することはできません。代表者が生存していれば、代表者の住所を手がかりとして、調査することも可能ですが、代表者が既に死亡している場合には当該方法がとれません。


そのため、まず、当該代表者の相続人を調査した上で、当該相続人に対して聞き取りを行う方法が考えられます。当該法人の本店所在地を確認の上、直接法人に赴き現経営陣の状況を聞き取る方法や、当該土地の隣地所有者に対して聞き取りを行う方法も考えられます。


なお、取締役会設置会社の場合には、定款において代表者の選任機関について株主総会と定められない限り、取締役会が選任することになるので、選任機関の調査も必要となり得ます。いずれにしても、法人内部の情報については、協力を得られる株主から取得することになります。



6.所有者とされる法人の代表者が所在不明のケース

購入を検討している土地「登記名義人」の法人代表者が所在不明の場合


■代表者の調査方法

商業登記記録において、通常、代表者の氏名および住所の記載があるため、代表者の連絡先情報を取得できます。しかし、事例のように商業登記記録の住所宛てでは連絡がとれない場合には、住所変更等の事情により現住所の調査をする必要があります。


方法としては、商業登記記録上の住所を手掛かりに、住民票の取得を申請することが考えられます。住民票記載の住所が登記情報と異なっていれば、戸籍の附票により現住所を調査することになります。


他方で、住民票記載の住所と登記情報とが同一であれば、当該住所には既に居住しておらず転出ないし転籍をしている可能性が高いため、除票を請求することになります。


上記調査によっても、代表者の所在が判明しない場合においては、商業登記記録に記載される取締役ないし監査役に連絡を試みることが考えられます。その就任登記の登記申請書の閲覧請求を行い、就任承諾書に記載される住所を手がかりとして、取締役ないし監査役の住所情報を調査することが考えられます。


また、当該法人の本店所在地を確認の上、直接法人に赴き現経営陣の状況を聞き取る方法も考えられます。



7.まとめ

所有者が不明な土地の調査と手続きは複雑で時間がかかります。しかし、適切な手順と法律に基づく手続きを踏むことで、土地の購入を円滑に進めることが可能です。

不動産取引においては、専門家の助言を受けながら確実な情報収集と手続きを行うことが重要です。正確な情報と適切な手続きを踏まえて、安心して土地の購入を進めましょう。


参考:土地家屋調査士法人「臼井事務所ブログ」


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