未登記建物とは?表題登記をしないデメリットや手続きの流れ・必要書類などを解説
不動産の登記は、所有権などを保全するための重要な手続きです。登記をせずに未登記建物のままにしていると、相続時などさまざまな場面で、デメリットが発生しますので、十分にご注意ください。
本記事では、未登記建物の表題登記をしないデメリットや、手続きの流れ・必要書類などについて詳しく解説します。不動産登記の概略や表題登記が必要な理由、未登記のままになってしまう理由などについても説明します。未登記の不動産について疑問や不安をお持ちの方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
目次
1.未登記建物とは?
未登記建物とは、不動産の登記をしておらず、所有者や所在が不明な状態の建物のことを指します。
1)不動産登記とは?
不動産登記は、土地や建物の所有者を公的に明確にするために行われる記録のことです。これにより、土地と建物は個別に登記され、それぞれの不動産ごとに登記簿謄本が作成され、一般に公開されます。
登記簿謄本は、以下の3つの部分に分かれており、表題部の登記を「表題登記」、権利部の登記を「権利登記」といいます。ちなみに、表題登記は「土地家屋調査士」、権利部は「司法書士」の独占業務になります。未登記の不動産をお持ちの方は、まずは土地家屋調査士にご相談ください。
表題部 | 不動産の所在地番や土地の地目、地積、 建物の家屋番号、種類、構造、床面積などについて登記 |
権利部(甲区) | 不動産の所有権について登記 |
権利部(乙区) | 抵当権など所有権以外の権利について登記 |
参考:法務局「不動産登記申請手続(土地家屋調査士に登記申請を依頼する場合)」
2)不動産の表題登記は法的義務
不動産の表題登記は、法律で義務付けられていますが(不動産登記法36条・47条)、現実的には未登記の建物が多く存在しています。未登記建物は、所有権や抵当権を登記簿に示すことができず、法的手続きに不都合が生じますので、十分にご注意ください。
未登記建物は、特に売却や相続などの法的手続きにおいて問題が生じる可能性があります。前述のように、不動産の表題登記は法的義務で、違反した場合には罰則も定められています。現状では、実際に罰則が科せられるケースはほとんどありませんが、2024年4月からの「相続登記義務化」に伴い、厳しく確認される可能性があるので注意が必要です。
参考:法務省「不動産を相続した方へ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」
3)未登記建物の確認方法
建物が登記されているか確認するには、固定資産税納税通知書を確認する方法があります。未登記でも納税は必要で、通知書は届いているはずです。固定資産税納税通知書の家屋番号が「空白」または「未登記家屋」となっていれば、その建物は未登記ということになり、登記済みの建物であれば家屋番号欄には数字が記載されています。
参考:川崎市「登記申請時の固定資産税・都市計画税課税明細書の利用について」
2.未登記のままになってしまう理由
未登記建物が発生する理由としては、自己資金だけで建物を建てる場合には、登記をせずともとくに支障がないからです。金融機関からお金を借りて、住宅などを購入する場合には、必ず登記をすることになり、未登記ということにはなりません。したがって、住宅ローンが一般的になる以前に建てられた住宅に、未登記建物が多くなります。
建物売却や融資の際の抵当権設定、相続などが発生しないかぎり、とくに支障がなかったため、「ついつい未登記のまま」となっているのが現状です。
3.未登記建物のままにしておくデメリット
未登記建物のままにしておくことは、さまざまなデメリットやリスクを生じる可能性があります。これらの危険性を認識して、適切な登記手続きを行うことが重要です。
1)法的な保護が受けられない
未登記建物は法的に保護されていないため、所有者が建物に関する権利を主張することが困難です。例えば、他人が建物を占有しようとした場合や、建物に関するトラブルが起きた場合に、法的な手段を取ることができません。
2)融資や売却が難しい
銀行などからの融資や売却の際に問題が生じます。融資を受ける際には、建物の所有権や価値を証明する必要がありますが、未登記の場合はその証明ができません。また、売却の際にも、登記がないことが買い手にとって不安要素となり、価格交渉に影響を与える可能性があります。
3)相続手続きが複雑になる
未登記建物を相続した場合、手続きが複雑になります。相続税の申告や相続財産の分割など、手続きに時間と費用がかかるだけでなく、登記のない建物に関する情報が不足するため、相続人間でのトラブルや紛争が生じる可能性もあります。
4)建物の価値が低下する
未登記建物は、法的な保護がないため、その建物の価値が低下する可能性があります。将来的な不動産価値の見通しが立ちにくく、周囲の不動産に比べて価値が下がることもあります。
5)法的なトラブルやリスクが生じる可能性がある
例えば、建築基準法や都市計画法に違反している場合、行政からの指導や是正命令を受けるリスクがあります。また、建物の築年数や耐震性などに関する情報が不明確であるため、将来的な修繕や改修の際に問題が生じる可能性もあります。
4.表題登記の手続きの流れ
未登記建物を表題登記する場合の、基本的な手続きの流れは、以下のようになります。
①法務局や市区町村役場などで調査を行います ②建物の現地調査を行います ③建物の測量などを行います ④登記申請書類や図面を作成します ⑤法務局にて表題登記申請を行います ⑥所有権などの登記を行います ⑦手続き完了 |
未登記建物の表題登記は、土地家屋調査士に依頼することが一般的です。新築建物で書類がすべてそろっていれば、自分で行うことも不可能ではありませんが、基本的には専門家に任せるほうが安心です。
手続きに必要な書類をすべてそろえたうえで、法務局で登記申請を行います。古い建物で、書類などがそろっていない場合には、早めに土地家屋調査士に相談することがおすすめです。
表題登記の手続きは、所有権を明確にするために非常に重要です。登記手続きを行わない場合、過料などの制裁を受けたり、最悪の場合は所有権を失ったりするリスクがあります。また、将来的には相続登記が必要になる可能性が高いため、早めに表題登記の手続きを行っておくことをおすすめします。
5.表題登記の必要書類
未登記建物の表題登記をするときに必要になる書類は、主に以下のようになります。ケースバイケースで、少し異なる場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
これらの書類をそろえて、管轄の法務局に提出することで表題登記の手続きが行われます。表題登記は不動産の表示に関する重要な手続きであり、多くの書類の提出が求められます。
とくに古い未登記建物の表題登記をする場合には、建物に関する書類が紛失しているケースも多くなります。そのようなケースでは、専門家の助けを借りる場合もありますので、必要に応じて土地家屋調査士に相談してみてください。
□登記申請書 □建物の所有権を証明する書類 □建物図面や各階の平面図 □所有者の住民票 □所有者の印鑑証明書 □委任状(土地家屋調査士に依頼する場合) □その他 【相続登記の場合】 □被相続人の住民票や戸籍謄本 □相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書 □遺産分割協議書 □その他 |
6.まとめ
未登記建物は、不動産登記簿に登録されていない建物のことを指します。つまり、所有者や権利関係が法的に確定されていない状態です。未登記建物を所有している場合、表題登記をしないとさまざまなデメリットやリスクが生じます。
未登記建物の表題登記をするためには、いくつかの手続きと書類が必要です。具体的な手続き方法については、土地家屋調査士などの専門家に相談することをおすすめします。
未登記建物の表題登記は、所有権を保全するための重要な手続きで、適切な手続きを行わないと、相続や売却などの際にあわてることになります。いずれにしても、表題登記が必要になるケースが大半ですので、早めに手続きしておくことをおすすめします。
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